加藤穂月 「セレンディピティに辿りつくには」

今注目の若き油絵画家・加藤穂月の待望の初個展が3月16日よりDMOARTSにて始まります。作家自身が偶然出会った日常の気づきから着想し、イメージを膨らませ、形に起こしていく作品は、「セレンディピティ」という言葉と共にどこかファンタジーで観る者の想像力を掻き立てます。油絵の具の匂いが心地よい大阪市内のアトリエで、これまでのこと、これからのことについて話しを聞きました。

 

「霧が晴れる瞬間」

--いいですね、このアトリエ。広い!

  • とても気に入っています。前が狭いワンルームだったのでもう天国です(笑)

--アトリエにある作品を拝見すると加藤さんの絵には人物が必ずいます。しかも抽象的で何かしらのストーリーも感じます。インスピレーションはどのようなもの?

  • 普段考えていることや、友達との会話から人のイメージが生まれてくることが多いですね。

    人物が出てくるのは、「目の合うもの」が絵の中に欲しいからです。感覚的なことだけど、私は描きながら絵と対話するのを大事にしているので、人物はその対象みたいな存在でもあります。描くときは大体の構図は出来ていますが、その状態はまだ霧で包まれた感覚です。下描きせず色を乗せ、結果的に最初と違う絵になっても「あぁ私が気になっていたのはこれだったのだ」というような気づきや、モチーフがキャンバス上で形になってくると、直感的に良いと感じていたものが確信に変わります。絵と対話してキャンバス上で重ねるうちに、霧が晴れてきます。

  • --アトリエにある作品を拝見すると加藤さんの絵には人物が必ずいます。しかも抽象的で何かしらのストーリーも感じます。インスピレーションはどのようなもの?

--そしてその霧が晴れる瞬間はどこですか?

  • 「これ以上何もしなくていい」と分かる瞬間。 学生の時に初めてこれを体験しました。その最後の一筆を入れた瞬間に「あ、この絵を描き終えた」と涙が出てきました。その時に、私はこれからも絵を描き続けられるなと思いました。最後の線を入れる「時」を絵が教えてくれます。

「辿りつくためには」

--今回の個展タイトルにもある「セレンディピティ」は、「偶然」や「引き寄せ」という言葉にも置き換えられています。作品で「偶然の場面」を選ぶポイントを教えてください。

  • 残らない一瞬や一連の時間軸の流れを描くのは学生時代から同じですが、絵との関わり方で変わってきたことがあります。 描きたいのに題材が無い、必死に探しても見つからないというジレンマに何度か陥りました。あるコラムで、小山薫堂さんが写真家のハービー山口さんに「どうしてそんなに良い瞬間の写真が撮れるの?僕も同じライカを持っているけど、そんな瞬間に出会えない」と尋ねたところ、ハービーさんは「人間力を鍛える」と答えた。その例えが、「朝早く起きて自分の家と、隣の家の前を掃除する。見返りを期待しない貢献をすると人間力は鍛えられる」と。すごい感銘を受けました。その頃、「セレンディピティ」という言葉に出会った時期でもあり、偶然は努力したら出会えると思えるようになりました。絵の題材が無い、キャンバスに施せない、、ではなく、施すための素材は自分でこしらえるぞ!と思ってから嬉しくなった。人間力を鍛えると描く題材をキャッチするアンテナが動く。普段から努力する部分があるというのは自分の中で救いでした。

  • --今回の個展タイトルにもある「セレンディピティ」は、「偶然」や「引き寄せ」という言葉にも置き換えられています。作品で「偶然の場面」を選ぶポイントを教えてください。

--加藤さん、すごい気づきですねそれは。いまお幾つですか? まだ若いでしょう?

  • 25です(笑)芸術はともすれば特殊な人間の仕事だと思われることも多いのですが、実は日常こそにテーマが転がっているという事を気づかされた瞬間でした。

--それで個展のタイトルを「セレンディピティに辿りつくには」にしたのですね?

  • 本当は「セレンディピティ」の一言で言い切りたいところだけど、私はまだその境地には至っていないし、人間力を鍛えてセレンディピティを探している途中です。だから、「辿りつくには」も加えてこのタイトルにしました。

--この個展で伝えたいことを教えてください。

  • 等身大の自分を表現するのが精一杯で「こうあって欲しい」というよりも、私の泥臭いところも作品を通して感じて頂ければ。私は、あらゆる表現者の泥臭いところに救われ感動を覚えたことがたくさんあるし、影響も受けました。この個展もそうであれば嬉しいです。

--好きなアーティスト教えてください。あと、今かかっている音楽が凄い気になります。

  • アーティストの鈴木康弘さんの考え方が好きです。モノの観察力が面白い。

    この音楽はネバヤン(never young beach)が好きなディヴェンドラ・バンハート(Devendra Banhart)です。ネバヤンめっちゃ好きです!あと、フィッシュマンズは譲れませんね。

--近い将来、あるいは遠い将来、加藤穂月はどうなっていたいですか?

  • やりたいこと一杯あります。でも、飽き性の私が唯一続いているのは作品を作り続けているということ。ようやく、油絵の具が合っていると思えてきました。面白いことが毎日たくさんありすぎて寿命足りないくらいです(笑)。何かをやりたい人の周りには人が集まりそこから色々と生まれてきますよね。生きているってことはその連鎖だと思っているので、私は生きていることを楽しみたいです。

  • --近い将来、あるいは遠い将来、加藤穂月はどうなっていたいですか?

ARTIST PROFILE

  • 加藤穂月 / Hozuki Kato
  • 加藤穂月 / Hozuki Kato

    1992年 大阪府生まれ
    2015年 京都造形芸術大学 卒業

     

    [個展]
    2015年「加藤穂月展」ギャラリー16(京都)
    2015年「地平線と干し葡萄」京都的芸術廉价中心(京都)
    2017年「加藤穂月展」ギャラリー16(京都)

    2018年「セレンディピティに辿りつくには」 DMOARTS(大阪)

     

    [グループ展]
    2013年「京都造形芸術大学学生制作展」京都造形芸術大学(京都)
    2013年「東北芸術工科大学交流展」東北芸術工科大学(山形)
    2014年「おしりが甘くなる」art space-MEISEI(京都)
    2015年「002おしりが甘くなる」art space-MEISEI(京都)
    2015年「混沌から躍り出る星たち2015」スパイラルガーデン(東京)
    2015年「UNKNOWN ASIA Art Exchange Osaka 2015」中央公会堂(大阪)
    2016年「asianeye」DMOARTS(大阪)
    2016年「シェル美術賞」国立新美術館(東京)
    2017年「JOINT EXHIBITION yodo studio×STUDIO HAIDENBAN」STUDIO HAIDENBAN(京都)

     

    [受賞歴]
    2015年 京都造形芸術大学卒業制作展【優秀賞】
    2015年 UNKNOWN ASIA Art Exchange Osaka 2015【Rick Wang賞】
    2016年 シェル美術賞【入選】

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