河野ルル 個展「LULU」

河野ルルさんはdigmeoutが企画運営する国際的アートフェア「UNKNOWN ASIA 2017」に出展し、日本人アーティスト初のグランプリを受賞。飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍で大注目の新人ですが、本人はそんな気負いもなくとてもカラフルでピュアな人柄。そんなルルさんにこれまでのこと、これからのことについてお話しを伺いました。

始まりは、旅でした

--大阪での初個展、おめでとうございます。その後のお仕事など快進撃ですね!

  • ありがとうございます。もうUNNOWN ASIA以降の変化が目まぐるしくて。

    でも毎日絵を描くのが楽しくて仕方ないです。ご飯を食べる時間も忘れて没頭して描いています。多少は親を喜ばすこともできました。(笑)

--メキシコ旅行中にお金が底をついて宿の壁画を描きながら宿代をタダにしてもらったというエピソードは有名ですが、それについて教えてください。

  • メキシコに行く前にアジア、ヨーロッパ、北アフリカ、アメリカを回りました。「死者の祭り」を見にメキシコへ行ったもののお祭りは2か月後。そしてお金は底を尽き・・・頼み込んで宿泊代の代わりに宿の掃除をしていましたが、「こんなことするために来たんじゃない・・・」と悲しくなって。ある日、屋根の上でぼんやりしていたら向こうに壁があるじゃないですか。ハッとして「あそこに絵を描きたい!」と閃きました。失うものは何もなく、「言うだけ言ってみよう」の精神で。宿の主人に頼んだら「いいよー」と(笑)拍子抜けするくらいあっさりOKでした。

  • --メキシコ旅行中にお金が底をついて宿の壁画を描きながら宿代をタダにしてもらったというエピソードは有名ですが、それについて教えてください。

テニスラケットを絵筆に持ち替えて

--それまでは絵を描いていたのですか?

  • まったくありません。幼馴染は「絵描いてたっけ?」と今でも言います。私はずっと親の影響でテニス漬けの学生時代でした。でもなぜか、旅行中は「スケッチ出来たらカッコいいな」程度の軽い気持ちでスケッチブックだけ持参しましたが絵の具は無し。宿の主人が絵の具を買ってくれて初めて描いたのが27歳です。食堂や外壁に色々な絵を描きましたが、これがもう楽しくて仕方なかったです。

--帰国後は絵でやって行こうと?どういう行動を起こしたのですか?

  • 漠然とは思っていましたが、まずは絵を描く環境が欲しかった。就活では「絵を描きたいので休みの多い御社を志願しました」と馬鹿正直に言うから全部落ちました(笑)それで踏ん切りがつき、ボロ家を借りて絵を描くことに専念しました。

--初仕事の思い出を教えてください。

  • まず売り込まなきゃ!と思い、名古屋の大須商店街をお豆腐屋さんからエステサロンまでくまなく「絵を描きます!」と言ってメキシコで作った名刺と共に売り込みました。でも、「なにこの子?」の視線が冷たくて・・・。当たり前ですよね、当時は方法もツテもない。当たって砕けていました。駐車場の陰でも泣きました。すると最後にパワーストーンの店主が「うちのネコちゃん描いてくれる?」と言ってくれた。ルンルンで帰宅してからお金のこと相談していないことに気づき、お金は諦めていましたが、嬉しくて楽しくて。後日持っていくと「少しでごめんね」と3,000円くれたのです。これで仕事と呼んでいい!よし!と。

  • --初仕事の思い出を教えてください。

--その流れでUNKNOWN ASIAに出会うのですね?

  • はい。知人に教えてもらって説明会に行きました。絶対に出ようと決めて、それから11月の本番まではUNKNOWNのことだけを考えた生活でした。自力では絶対に辿り着けないプロの方に見て頂けるだけでも凄いのですが、グランプリ受賞して一番驚いたのは自分です。絵の勉強も経験もなく、私は自分の絵が大好きだけど果たしてこれでやっていけるのだろうか?という自信の無さが常にありました。けれど、賞を頂いて「これでいいんだ」と素直に思えるようになりました。

--絵の話しに戻りますが、ルルさんの作品は色彩が印象的ですね。影響を受けた作家など教えてください。

  • 影響をすぐに受けてしまうのでできるだけ見ないようにしていますが、旅行中に二人の画家から受けた影響は大きかった。一人はトルコのアブニという画家。そしてアルゼンチンのギド。ギドは旅する画家で、メキシコの宿で私が壁画を描いているときに向かいの建物の壁画を描いていました。ド素人の私と違いとても上手く1日見学させてもらい、絵の具やスプレーの使い方、色の混ぜ方を観察しました。感動したし勉強になりました。そして、もともとメキシコ刺繍の色合いや民芸品が好きで、きっと自分の中にそういう色彩が入っているんだと思います。    

--そして色々なモチーフが登場して楽しいですね。どのように描き出すのでしょうか?

  • モチーフのテーマだけは先に決めます。そして真っ白な気持ちでキャンバスをじっと見つめているうちに頭の中でイメージと色が湧いてきます。下書き無しで絵筆を握り左利きなので右下から描きます。

人との出会いが何よりの刺激

--なるほど。そんなルルさんの絵を一堂に観られる個展。地元以外での初個展への意気込みを教えてください。

  • 大小合わせて約20点を展示する予定です。一人でも多くの方にお会いしていっぱいお話しできたら嬉しいです。皆さんに会いたいので、10日間ほど在廊して公開制作のように絵を描こうと思っています。大阪は前から大好きだし馴染み深い街です。その大阪で個展が出来ることにとてもワクワクしています。

  • --なるほど。そんなルルさんの絵を一堂に観られる個展。地元以外での初個展への意気込みを教えてください。

--近い将来、遠い将来、これからやってみたいことなど教えてください

  • 「あなたの絵を描いて」と言われて描き続けたいです。子供たちの施設でも描きたい。「あなたの絵は気持ちが明るくなる絵だね」とUNKNOWN ASIAで言われました。賞は勿論嬉しいけれど、この言葉が心底嬉しかったです。だからそれを大事に国内外でいろんな出会いの中で描きたい。結局、旅が出来て、絵を描き続けて人との出会いが私のやりたいこと。この3つが出来ていたら「結果オーライ」です。

  • --近い将来、遠い将来、これからやってみたいことなど教えてください

ARTIST PROFILE

  • 河野ルル / Lulu Kouno
  • 河野ルル / Lulu Kouno

    UNKNOWN ASIA 2017 グランプリ受賞

    名古屋在住。2015年、会社を辞めて長期の旅行に出かける。いろいろ旅行した後たどり着いたメキシコで口座のお金をほとんど使ってしまったことに気づく。そこで宿の壁に絵を描く代わりに、タダで宿泊させてもらえないかとホテルのオーナーに交渉。 描き終わったらまた次の宿に移動し、いろんな壁に絵を描いているうちに、 それが楽しくてしょうがなくなり、絵を仕事にしたいと、約1年後帰国。2016年春から作家活動を開始。

    ほとんどの絵が下書きなしの一発書きで、見ている人が明るくなればいいと思って描いています。目標は、世界中の孤児院や障害児童施設に絵を描いて、そこにいる子どもたちに喜んでもらうこと。
    https://digmeout.net/artists/lulu-kouno/

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