谷小夏 個展「ie」

大阪を拠点に全国区でお仕事をされる谷小夏さんが満を持してのDMOARTS初個展を開催します。今回はエスペラント語「ie」(どこかの)というタイトルで描き下ろしの作品が並びます。個展直前の谷さんに、絵との関わりやこれからのことなどいろいろとお話しを伺いました。

高校時代の先生との出会いがはじまり

--谷さんは京都精華大学のご出身ですが美大に行くきっかけを教えてください。

  • 高校での美術教師が今の私に大きな影響を与えてくれたと思います。中高一貫の女子高の進学コースで、一般大学を目指していました。先生と出会ってから漠然と「絵を描くのが好き」から、「いい絵が描きたい」に変わり、115時間くらい描き続けていました。寝ても覚めても他の授業中でも。先生たちも「しゃあないな」って思われていて(笑)これだけ描くのが好きだし止められなくて、高3の夏に進路を変更して精華大学を受験しました。その先生と出会えたことが人生のターニングポイントでした。高校の美術部でもアクリルポスターから100号の油絵まで描くなど、かなり本気の美術部でしたね。

  • --谷さんは京都精華大学のご出身ですが美大に行くきっかけを教えてください。

--イラストレーションコースを選んだのは、将来イラストレーターになりたいという気持ちがあったのでしょうか?

  • そうした考えは当時は無くて。卒業生がカッコいいものを作っている大学に行きたかった。たくさんパンフレットも見て、精華大学の先輩たちのイラストが一番カッコよかったのが決め手となりました。

--これまでにどんなお仕事を手掛けられていますか?

  • 初仕事は3回生の時に個展をした時に、そこに来られたデザイナーの方から頂きました。レストランのホームページのイラストで、今でもその方にはお世話になっています。他には、雑誌の挿絵、グッズ、住宅建材メーカーの冊子、ライフスタイルのセレクトショップのシーズンカタログや、母校の樟蔭高校の入学募集のビジュアル全般もやらせて頂いています。特に母校とのお仕事は、その美術部の先生へ恩返しがしたいとずっと思っていたので、嬉しいです。

  • --これまでにどんなお仕事を手掛けられていますか?

--谷さんはどのように絵を描き始めますか?

  • まず人物を描きます。次に、どこにいるのか、何に座っているか、その後ろには何があるか。人がいて、周囲のシチュエーションを足すように想像しながら下書きをします。最初はわりとラフに描いてから詰めていきます。人物以外の場合、たとえば果物なら、どんな雰囲気の中の果物にしようかを考えたり。空間や女性の画像を観ながら、実際にその絵は描かないけれど、「エレガントな女性のような無花果を描こう」などを思いながら描くことで、私らしさを出すようにしていますね。下書きが出来たら仕上げていきます。

エスペラント語がしっくりくる理由

--今回の個展タイトルはie。これはエスペラント語で「イエ」と発音するのですよね? エスペラント語を選んだことが興味深いです。

  • 「イエ」は「何処か」という意味です、英語ならsomewhereですかね。 私は、「イエ」には日本語の「家」も当てはめています。あと「いい絵」(笑)ダジャレみたいだけど、ずっといい絵を描きたいので。今回は家族をキーワードにしていますが、家族がテーマというより、「どこかの家族」です。私の絵は「欧米ぽい」と言われたり「日本人だね」と言われたり、本当に観る人によって様々です。その「どこか」というのは観る人によって委ねたいと思ったのが最初です。実は私、卒業してからの個展は今回で3回目ですがずっとエスペラント語を使っています。1回目は「パペロ」、紙という意味。2回目は「フィルモ」、映画のフィルム。エスペラント語は母国を持たない世界公用語として生まれた人工言語です。しかし、知られていないしほとんどの人が意味や読み方が分からない。そういうのが逆にいいなと思えて。私が考える「どこかの国のどこかの人々」が、まさにエスペラント語の存在としっくりくるのです。

  • --今回の個展タイトルはie。これはエスペラント語で「イエ」と発音するのですよね? エスペラント語を選んだことが興味深いです。

試行錯誤があるから工夫ができる

--谷さんは最初から色鉛筆を好んで使っているのですか?

  • アクリル、水彩絵の具、油など色々使ってきました。画材のこだわりというよりも、自分の作品を引き出してくれる、成長させてくれるのが画材です。仕事はお客様の期待通りに納期内に納品することが大前提だから冒険はしないけれど、自分の絵はどれだけ失敗してもいい。1枚いい絵が描ければ良いと思って失敗も挑戦もどんどんします。出来ることだけをやると作品は成長しないから、出来ないことをやらないと意味が無いと思っているので、目の前に、出来そうなことと失敗しそうなことがあれば、失敗しそうなほうから描きます。もう、いっぱい失敗していますよ。色鉛筆で行き詰ったら別の画材で挑戦します。色鉛筆で出来なかったことが出来るし、色鉛筆で出来たことが出来ない。そんな試行錯誤があって色鉛筆に戻ってきたら、別の工夫ができるんです。

  • --谷さんは最初から色鉛筆を好んで使っているのですか?

--DMOARTSでは初個展となりますが、抱負などお聞かせください。

  • 楽しんでもらえたら良いですね。たまたま通りかかった方や、私の絵を見に来てくださった方、ギャラリーのファンなど様々でしょうが、皆さんに「観れて良かった」と思って頂けると嬉しいです。それと、私の絵を大学1回生の時から見てくださっているDMOARTSディレクターの高橋さんが「絵のサイズ以上の広がりが出ていて、観ている人に想像させる感情が入っている」と言ってくださったのがとても嬉しいです。

ずっといい絵を描きたい

--将来はどんな風になっていきたいですか?

  • 画材や描き方を変えることで少しずつ作品が成長しますが、次は大きめの絵を描くことに挑戦したいです。

--肩書はイラストレーターですが、そこへのこだわりはありますか?

  • イラストは好きですが、肩書にこだわらずに、私はとにかく「いい絵」を描き続けていきたいです。

ARTIST PROFILE

  • 谷小夏 / Konatsu Tani
  • 谷小夏 / Konatsu Tani

    1993年 大阪生まれ
    2016年 京都精華大学デザイン学部ビジュアルデザイン学科イラストレーションコース卒業

    2015年 個展「MY LIFE」(Kara-S / 京都)
    2016年 個展「papero」(SIO gallery / 大阪)
    2018年 個展「filmo」(出町座 / 京都)

     

    https://www.instagram.com/tani_konatsu/

    http://tanikonatsu.tumblr.com

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