中村muchoよしてる 個展「home made」

2年ぶりとなる中村muchoよしてる個展は、おもちゃ箱をひっくり返したようなワクワクがたっぷり。暮らしに溶け込む、まさに「home made」な暖かみとピースな空気に満ちたアトリエにてお話をたくさん伺いました。

「人に伝えたい」が転機

--muchoさんは、もともとは油絵ご出身とか。

  • 美大の絵画コースで、4年間は油絵漬けでした。具象画で100号とか大きいサイズを描いて、美術団体が主催する大きな展示会に出したりもしました。就職活動もせずにバイトと絵描きだけで社会との接点は無かったです。

--いまのmuchoさんから少し想像しづらいのですが、どういう流れで具象の油絵から今のイラストやコラージュに転換していかれたのでしょう?

  • オシャレそうだから美大へ行ったのに(笑)、大学時代は自分と向き合い過ぎて「自分は何者か?」とか模索していましたね。油絵を描いていた時には「人に伝えたい」というものが無かったんですよ。けれど「絵を描いている」と地元の友達に話しても「ふーん」で終わる。だんだんと「友達にも伝わるものが良いな」という気持ちへと変化してきて、年に100号の油絵を何枚か続けていくのも違うと思ってきたころに、イラストへと変化していきましたね。「ずっと描き続けて、アートに興味がない人にも伝わるのが良い」。これが今でも僕の根っこです。当時(2004年)は、大阪の堀江辺りではカフェ個展が全盛で積極的に出ました。2006年にはある程度の数の作品が出来たのでdigmeoutのオーディションに応募したら合格しました。僕はYUGO.や西祐佳里さんの1年後輩、寺田マユミさんは同期です。

  • --いまのmuchoさんから少し想像しづらいのですが、どういう流れで具象の油絵から今のイラストやコラージュに転換していかれたのでしょう?

--今の方向性になってどうですか?

  • 楽しいですね!大学の頃は誰とも分かち合えずに悶々としていたけど、そこから20年近く経って「楽しい」って思えるようになりました。見てもらうのも楽しい。「毎回、人を楽しませたい」というのはプレッシャーですが、制作していると早く皆に見て欲しいというワクワク感に変わるんです。ストイックになりすぎると僕の場合は失敗します(笑)

フリースタイルが信条

--muchoさんの作品を言葉で置き換えるとどんな単語が良いでしょうか?

  • ひとつは「素材感」ですね。僕は素材の感じを作品に反映することを大事にしています。例えば、クラフトペーパーの質感、切手を貼ったときの感じ、古着ならダメージやプリントのひび割れやカスレ。そういう風合いというか素材感です。あとは、「等身大」と「温度」です。背伸びしていなくて、自分のアトリエや家と同じ温度を出す。「あ、muchoやな」って思ってもらえるのを強みにしたいです。

--今回の個展用にアトリエで絶賛制作中ですが、モチーフやテーマの決め方を教えてください。

  • もうね、フリースタイル、または「行きがかり上」です。4歳の娘と一緒に色を付けた画用紙を取り切り貼りしていたら、最初思っていたモチーフと違うものが出来ます。例えばギターは、最初はパンのつもりでした。でも連想ゲームのようになってきて出来上がったのがギターのモチーフ。昔は下絵やトレースをしっかりしていたけれど、それよりも頭から手までの完成までの時差を埋めたくて。どんどん手を動かして、ここ10年くらいで自由になった。色もバシッと決めるのではなく、水彩やアクリルガッシュ、クレヨンを縦横無尽に走らせた画用紙を使うから、紙片の色の滲み、ストロークも見てもらえたら楽しいですよ。

  • --今回の個展用にアトリエで絶賛制作中ですが、モチーフやテーマの決め方を教えてください。

ここからどう広げていくかが楽しみ

--今回の個展では「home made」というタイトルを名付けられましたが?

  • クッキーやパンとか、お母さんが家で作る店のモノと違う良さ。台所でクッキーを焼くように僕が生活をしながらこの部屋で作りました。衣食住と制作が同じ温度で毎日を過ごしています、みたいな。日々の暮らしで見た、僕のアンテナに引っかかった表現たち。ミニマムな生活の中で生まれるホームメード。自分のスタンスの活動で、自分なりのやり方でやっていきたいと思うようになってきました。

--今回2年ぶりですが、実はDMOARTSの歴代の場所で個展をした唯一のコンプリート作家ですよね。muchoさんの作品を初めて観る人も含めて伝えたいことなど教えてください。

  • 僕、ルクアイーレにDMOARTSがあることって凄く意味があると思っています。「アートギャラリーって敷居が高くて分からへん」ってありますよね。でも色んな人が集まる施設にある、しかも7階。これって、普通にライフスタイル雑貨やインテリアを見に来た人が普段意識したことなかったけど、アートを買うきっかけになってもらえたらいいな。あの場所ならできるはずなので、そういうことを伝えたい。僕の普段のミニマムな生活から生まれる作品です。壁を作品で「みっちみちに」埋めたい(笑)出来るだけ皆さんの普段の生活に飾ってもらえるのを意識しています。グッズは無しの作品だけです!

  • --今回2年ぶりですが、実はDMOARTSの歴代の場所で個展をした唯一のコンプリート作家ですよね。muchoさんの作品を初めて観る人も含めて伝えたいことなど教えてください。

--近い将来やりたいこと挑戦したいことは?

  • マッチ箱シリーズも数年続いて、ちょっと「雑貨寄りの人」と思われそうだったから(笑)今回はイラストに戻りました。だから、今回の個展の反応が楽しみ。「ここからどう広げていけるかな」、みたいなね。そこからまた始まるんだと思います。

DMOARTS DIRECTOR’S EYE

  • ムーチョさんの作品の素材やモチーフには温もりがあります。

    その一方で、常に変化し続けるアグレッシブさが共存しています。

    今回の個展では、近年取り組んできたマッチ箱や古着のTシャツを使ったコラージュ作品ではなく、自身がペインティングした素材をコラージュしており、作家としてのチャレンジングな姿勢が感じられます。

    生活の中に寄り添う作品を制作し続けるムーチョさんは、「民藝」的な絵画作家と表すことができるのではないでしょうか。

    自宅に飾って楽しむのにぴったりの作品をぜひご覧いただきたいです。

ARTIST PROFILE

  • 中村muchoよしてる
  • 中村muchoよしてる

    中村muchoよしてる
    コラージュやイラストを制作するアーティスト。
    マッチ箱や切手、エアメールなど日常で見つかるを素材で愛くるしいキャラクターを生み出している。GUNZEやマスターピースなでメインプロダクトへの作品提供や、FM802 MEET THE WORLD BEAT 2015のビジュアル、大阪マラソン2016 なないろチャリティーTシャツなどを手がける。
    https://digmeout.net/artists/nakamuramuchoyoshiteru/

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