北澤平祐 個展「インテリア・ストーリー」

--北澤さんはアメリカ生活が長いのですよね?

  • 10歳のころからLA16年住んで帰国しても16年経ちました。渡米前と合わせるともう日本の方が長いですね。

--子どものころから絵が好きでしたか?

  • 嫌いでした、特に写生の授業が。仮病で休むくらいに嫌でした。

--なぜにイラストの道へ?

  • 高校卒業後の進路を決めないといけない時期に、高校のアートの先生がアナハイムにある大学を教えてくれたんです。図画工作のクラスで結構褒めてくれていて、ちょっとでも絵に興味があるならその大学に行ってみては?と。アナハイムはDISNEYの街なのでアニメーション学科に行く人が多いのですが、僕はイラストレーション科へ行きました。とても良い先生に教えてもらい大学院まで行きました。アメリカで褒める教育に出会っていなかったら絵を学ぼうとは思わなかったと思います。その大学時代に、LAの書店で「digmeout 01」を見つけました。カッコいい本だなって思いました。

  • --なぜにイラストの道へ?

--その後に日本へ?

  • 妻と出会った頃で一緒に帰国することになったのですが、16年間アメリカにいたから日本に知り合いがいない。さて、困ったなぁと思って、会ったことも無いけれどdigmeoutに名前のあった谷口さんに「素敵な本でした」ってメールをしたら、「大阪においでよ!」って。ビックリしました。1週間後に大阪に行き、色々と教えて頂き、良くして頂きました。

--北澤さんは音楽好きでも有名ですが描くときも聞いていますか?

  • はい。今回の個展のようにシリーズで何十枚も描くときは、まずタワーレコードに行って視聴しまくって描きたいものに合いそうな曲をひたすら買って、今回描きながら良く聞いたのは、リイッシューされたピクシーズのファーストアルバム、トム・ヨークが手掛けた「サスペリア」のサントラ盤。これは良かったですねぇ。他にはハープ奏者のジョアンナ・ニューサム、The 1975の新しいアルバム。ラジオや映画は入り過ぎてしまうので絵を描いている時は音楽を聴いています。

  • --北澤さんは音楽好きでも有名ですが描くときも聞いていますか?

--お仕事はどのようなタイプのものが多いですか?

  • スタンスとしては、スケジュールが合わない以外はなるべく断らないように幅広くやっています。フランセとの仕事は、シリーズごとに違った画材を使うのでチャレンジが出来て、新たなスタイルの発掘につながっています。かつては仕事と個展の絵は別物で考えていたけれど、今は仕事でも新しいことを試させて頂けることが多くなったので、境目がなくなり精神的に楽になりました。一つのスタイルだけでやっていると飽きられてしまうのも怖いですし、もっと怖いのは、自分が飽きると何のために描いているのか分からなくなることなので、今の環境はありがたいです。良い無茶ぶりができるデザイナーさんが大好きで、自分じゃ絶対に思いつかないようなことを引き出してくれることに感謝します。

  • --お仕事はどのようなタイプのものが多いですか?

--日本とアメリカで仕事の違いってありますか?

  • 日本の打ち合わせ文化が好きで。アメリカは国土が広いからスカイプかメールでのやりとりがほとんどで結構ドライな関係性だったのですが、実際にお会いすると、長くお付き合いできることが多くなるように思えます。それと、基本的に日本は優しいなぁって思います。一時期、絵では食べていけない大どん底期があったのですが、思わぬところから個展のお誘いを頂いたり、いざという時はいつもだれかが助けて下さるのでなんとか生き延びています。ちなみに、その先駆けが谷口さんでした(笑)

--描くときに何にこだわりますか?

  • 「手癖を使わない」という事を最近は良く考えます。。描き続けていると良くも悪くも上手くなり、仕上がりの予想もついてきます。自分を退屈させないためにも不確定要素を常に盛り込みたいと思っています。仕事では左手で描いたり、紙を逆さにして描くこともありますし、この個展では使いづらいカリグラフィーペンを使いました。仕事でも個展でもアイディア出しに困ることは無いのですが、自分のテクニックが足りなくて描けないことは多くて悔しいです。練習しないとテクニックは身に付かないし、かといって練習しすぎてうまくなると「手癖」も付いてくるので難しいですね。

  • --描くときに何にこだわりますか?

--今回の個展「インテリア・ストーリー」について教えてください

  • インテリアと言う言葉は家具だけではなく、内面という意味もあります。タイトルにはその二つの意味を込めています。一応とストーリーとして、悲しい出来事で両親を亡くした双子の姉妹と、姉妹を守る執事、そして飼い猫を日常と変化の兆しという内容のお話で描きました。ただ、これは絶対のストーリーでは無く、見てくださった方がそれぞれのお話を作り上げて下されば嬉しいです今回初めて、カリグラフィーペンと墨を使いフリーハンドで家具を描き、その中にお話をカラーインクと面相筆で描きました。カラーインクは水の量で色調が大きく変わり、彩度も高いので、CMYK印刷ではなかなか再現できないのでぜひこの原画ならではの発色を個展にてご覧頂ければ。

  • --今回の個展「インテリア・ストーリー」について教えてください

--今後やってみたいことはどんなことでしょう?

  • これまでやったことが無いことはなんでもやってみたいです。やったことあることも、もっとやってみたいです。ずっと、沢山描いていきたいです。

DMOARTS DIRECTOR’S EYE

  • 北澤さんにDMOARTSで展示していただくのは今回で2度目です。

    今回は、ルクアイーレ7Fのフロアの雰囲気に合わせて、「インテリア」をテーマに制作をしていただきました。絵のモチーフ自体に「インテリア」が採用されていることはもちろん、家の中で「インテリア」として飾りやすい作品をたっぷりと新作で描き下ろしていただきました。

    北澤さんの絵はゆるやかなドローイングと優しいカラーリングが特徴的な温かみのあるイラストレーションですが、その中でもアグレッシブな姿勢が表現されていると、個人的に感じています。それは、従来の描き方やマテリアルに甘んじることなく、「飽くなき探求」があるからこそ生まれる表現なのではないでしょうか。

ARTIST PROFILE

  • 北澤平祐 / Heisuke Kitazawa
  • 北澤平祐 / Heisuke Kitazawa

    横浜市生まれ。魚座。東京都在住。アメリカに16年間在住後、帰国。イラストレーターとしての活動を開始。多数の書籍装画やCDジャケットから、広告、パッケージ、プロダクトまで国内外の幅広い分野でイラストを提供しています。「これはペンです/円城塔著」(新潮社)の装画で、講談社IN☆POCKET 文庫装幀大賞を受賞。
    https://digmeout.net/artists/北澤平祐/ 

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