―黒ねこ意匠さんの経歴を簡単に教えてください。
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一人:僕が名古屋や東海地方の商業イラストレーターをしていて、CMのイラストやパンフレットの表紙、企業のキャラクターなど、広告畑です。また、デザイン系の専門学校で講師をしています。僕は専門学校を修了したんですが、卒業制作を終えられなくて卒業はしていないんです。そんな人間が母校の非常勤をやっていますね(笑)
―黒ねこ意匠として活動を始めたきっかけは?
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良子:2011年の名古屋でクリエイターズマーケットに、2人で出たのが始まりです。前年に専門学校の授業の一環として学生と出展したんですが、簡素な机に印刷したポストカードを置いただけだったりして、あまり売れなくて。次は2人でお金をかけて什器を買って、どうやったら売れるのか実地検証したんです。
一人:ちょっと大人の遊びのつもりで。
良子:「黒ねこ意匠」という屋号を付けて、当時飼っていた「ロビン」という猫をモデルに彼がイラストを描きました。印刷にこだわってポストカードや絵本を出したら、きれいさっぱり売れたんです。プロのイラストレーターが本気を出したら、どういうリターンがあるか、というのを見せたくて。そのときは続けるつもりはなかったんですが、お客さんが次を期待してくれて、現在に至ります。
―ろびんちゃんのキャラクターは、どうやって生まれたんですか?
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一人:当時飼っていた猫のロビンが、ものすごく性格が悪くて。
良子:お姫様だったね。そのころ、リンドグレーンの児童文学の「ロッタちゃん」が映画化されて、主人公の幼稚園くらいの女の子が、とにかく不機嫌なんです。
一人:それを見て、うちのロビンと一緒だ!と思ったんです。とにかくかわいく描きたくなくて、斜に構えて媚びないかんじにしました。ろびんちゃんの目を見ていただくと、視点が定まらないようになっているんです。左右の目の三角形の確度を逆に描いてているんです。そうすることで見ている人を突き放したいんです。これ、気づく方とても少ないんです。
デザインされた、引き算のイラスト
―今も商業イラストレーターとしても活動されている中では、黒ねこ意匠の作品と描き分や、制作のしかたに違いはありますか?
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一人:違いますね。広告は自分が描きたい絵を描くのじゃないし、タッチも毎回全然違うんです。
黒ねこ意匠としてはタッチが決まっているので、その点は楽なんですけど、単純に「黒ねこ」としばってしまったので・・7年か8年ずっと黒い猫だけを描き続けるのは苦しい面もあります(笑)。でも、仕事よりは好きにやらせてもらっています。
―オリジナルの作品と、ほかの仕事とのスタイルの違いを出すために、工夫したことはありますか。
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一人:デジタルで描いているのですが、とにかくデジタルっぽく見せないようにしたかったんです。もともと古い印刷が好きだったので、孔版印刷に合うような絵柄にしました。
版画に近い描き方をしていて、コピーアンドペーストを使わずに、線を削っていくような手順です。手間なんだか楽なんだかわからない描き方ですね。
特に紙ものに印刷するときは、紙の質感を気にしています。
良子:孔版印刷自体が、計算以上にずれたり、けっこう質感が出ますね。
―「ろびんちゃん」以外で、黒ねこ意匠の活動というのはありますか?
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一人:全国の百貨店などに展開する洋菓子メーカーの、バレンタインチョコレートのパッケージがあります。「アンジュジュ」という名前の黒猫が中心で、目の表情も柔らかいんです。「ろびんちゃん」を知っている方からすると、ろびんちゃんが偽名で芸能界デビューした、ような受け取られ方をしています。
ろびんちゃんの時は多くて3色しか使いませんが、アンジュジュではポップな色づかいだったり、一般受けしやすいデザインですね。
―たしかに、作品はシンプルで、要素は多くないですね。
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一人:ディック・ブルーナ氏にはすごく影響を受けています。引き算のイラストを意識するようになって、結果ろびんちゃんにつながります。
―アナログで描く難しさはありますか。
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一人:アナログで描くようになったのは:ここ1,2年です。手書きで下絵を描いて、デジタルに取り込んでレイアウトして、それをまたプリントアウトして、トレスダウンして絵の具で塗る、という工程です。
アナログ原画だと印刷のときのかすれ、版画っぽさがなくなって、逆にポップになるので、また別物ですね。
―最初からデザインありきで考えているんですね。
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ラフのうちからここに文字入れる、というのを考えながら描いています。今回作ったブックスリーブの絵柄はデジタルで描きましたが、絵に起こす前にも別にデザインしてから起こしています。
良子:私からダメ出しが入ったりします。
絵本はこどもの思い出に残っていく
―出版された「くろねこ ろびんちゃん ぷんすか」はどんな絵本ですか?
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良子:「くろねこ ろびんちゃん ごろごろ」に次いで書いたものです。「ごろごろ」は言葉遊びが入っていて、絵本っぽい絵本。
「ぷんすか」は一番ロビンらしい、猫っぽい内容です。猫を飼っているひとなら共感できますし、飼い主がこう思っていてくれたらいいなという希望も入っています。
一人:「ぷんすか」は時間軸も描き込んであって、一番初めのページでは窓から雨を見ていますが、最後に向けて雨が上がっていきます。そこも、気づく人が気づくと、あっと思うかと。
―今回の展示で展示する作品は、どんなものですか?
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一人:今まで書き溜めたものと、「ぷんすか」からピックアップしたシーンの絵など新作を加えています。100%ろびんちゃんです。
―今後の夢や、やってみたいことは?
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良子:海外に行ってみたいですね。雑貨屋さんにおろしていたポスターを海外の方が買ってくれていて、ヨーロッパ圏の方、特にイラストレーターの方なんかの反応がいいんです。
一人:せっかく絵本を出したので、絵本を見て育った子が、「ろびんちゃん」を好きな絵本にあげてくれたら嬉しいな。と思います。作家冥利に尽きますし、同時に、飼っていたロビンはもういないんですが、多くの人に愛されてロビンはすごく幸せだなと思います。
―絵本に反響はありますか?
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一人:僕らはうちの子かわいいでしょ、というくらいで描いたんですが、絵本はすべて平仮名で、てにをはで区切ってあるので、耳が聞こえない子の勉強や、海外に在住しているこどもさんに日本語を教えたり読み聞かせに使ってくださっているそうです。
絵本を読んで昔飼っていた黒猫を思い出しましたとか、泣けました、という声があったり、反抗期の小学校4年生の息子さんと一緒に見て、そのあと息子さんが飼っている猫をなでていて、久しぶりに親子でいい時間を過ごせたという声をいただきました。
イラストレーターとしてやっていたら味わえなかったはずのことなので、そういうのが長く続くといいなと思います。
DMOARTS DIRECTOR’S EYE
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DMOARTSでは初めてご一緒させていただく黒ねこ意匠さんは、普段は商業的なイラストもこなすプロフェッショナルなイラストレーターです。
猫をモチーフにイラストを手がける作家さんは多数いますが、「黒猫限定。しかもご機嫌斜め」という気になる存在。取材でお伺いしたご自宅では今も4匹の猫とともに暮らしていて、さまざまな表情をしている猫たちが自由気ままに歩き回っていました。今回の個展のモチーフとなっているろびんちゃんに思い馳せつつ、作品を楽しんでご覧いただきたいですね。
ARTIST PROFILE
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黒ねこ意匠 kuroneko design
2011年より、名古屋を拠点に活動。
黒ねこの「ろびんちゃん」が主人公の絵本と雑貨を中心に、個展やマーケットイベントで好評を博す。
ゴンチャロフのバレンタインチョコレートに起用されるなど、活躍の場を広げている。
kuroneko-design.com
協力
ARCHIVES
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黒ねこ意匠 kuroneko design
2011年より、名古屋を拠点に活動。
黒ねこの「ろびんちゃん」が主人公の絵本と雑貨を中心に、個展やマーケットイベントで好評を博す。
ゴンチャロフのバレンタインチョコレートに起用されるなど、活躍の場を広げている。
kuroneko-design.com
斜に構えて、媚びない猫を描きたかった