―まずはこれまでのご自身の経歴を教えてください。
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絵を描くのが好きで、子どもの頃は漫画家になりたかったんです。でもストーリーを考えたり細かく描きこむのが好きじゃないことがわかってきて、中学生くらいで諦めました。
その後はデザインの会社に就職して、絵を描くことからは離れていました。
―いつからまた絵を描くようになったのですか?
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これは明確で、2017年1月1日です。
最近になってInstagramをはじめとしたSNSが普及してきて発信の手段が出てきたので、もう一回誰かに見てほしいという気持ちがふつふつと湧いてきました。
お正月休みの機会に、今の年齢で自分の表現をイラストに落とし込んでみたら面白いかなと思って始めました。それから今で、3年目ですね。
―そのときの作風と今のテイストの違いはどんなものでしょうか。
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漫画家を諦めたときにディテールを作りすぎるのは好きじゃないとわかっていたので、ほぼ今と近いシンプルなものでした。そのときは全身で、色も白黒でした。
リクエストに応えながら模索したスタイル
―ファンが付き始めて、お仕事に繋がって行くのはいつ頃からでしたか。
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1年くらい経った頃から「私の絵を描いてほしい」とか「この人を描いてください」というお願いが来るようになりました。知らない人が気に入ってくれて自分に依頼が来るだけで嬉しかった。
ある時、「無料では申し訳ないからこれくらいの金額を払います」という方がいたんです。僕に価値を感じて、お金を払ってくれるというので、そこは頂いてもいいのかなと思ったのが、対価をもらうようになったきっかけです。
―いまの作品のテイストにはどうやって辿りつきましたか?
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Instagram上で似顔絵を描いてもらう文化があるのを知らなかったので、最初はびっくりしました。誰かのために描くというのは、趣味の範囲では体験できなかったことです。その反面、リクエストに応えていくと自分のスタイルがわからなくなっていくので、模索して今のスタイルになっていきました。
他のイラストレーターとの差別化も、そうやってやり始めて意識しました。最初は鼻や口もあるイラストだったんですが、シンプルなものが好きなのでだんだんと変わり、デザインの知識を活かせるように色をつけることで独自性を出すようになりました。
グラフィックデザインの感覚でイラストレーションを描いている
―作品制作の方法について教えてください。
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デジタルツールを使い、グラフィックデザインをする感覚でイラストレーションを描いています。デザインの仕事をしていたので、手描きしてデータに取り込むよりも始めからデジタルのほうが早かったんです。まず先に輪郭を作ってから、色を入れています。
使う色は、ピンク、イエロー、ブルーなどある程度決まっています。パキッとした色よりも少し沈み込んだマットな色が好きなんです。例えば彩度の高いレッドやグリーンなどを使おうとすると、僕の描いた絵にはちょっと合わないなと思う。背景色は描いた人物画に合わせて決めていて、例えば背景をピンクにしようとしたら、この子の髪は黒より黄色がいいんじゃないかとか、そうやってバランスを決めています。
あとは、インスタグラムで並べたときに同じ色が続くとキレイじゃないので、6投稿ごとの色の並びを意識していますね。
―いくつかの作品を同時並行で書いているんですか?
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常に十何人かのストックがあって、その日に手をつけるものを選んでいます。1から9までのストックがあったとして、1の子を少しやって、次は9の子、でも上手くいかないから7の子の続きを描いてみよう・・という具合に並行して進んでいきます。
最終的に2つの絵が合わさって1つの絵になることもあるんですよ。この表情にこの髪形を組み合わせたらいいんじゃないか・・とか。
―特にこだわっている点は?
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表情を出さないようにしています。正面の顔は鼻や口もなくて目の点だけ。ある時に見たら笑っているように、またある時には悲しんでいるように、コンディションによって見え方が変わる絵にしたいと思っています。
目の大きさや間隔もそれぞれで変えているんです。シンプルだからこそ目の距離、大きさなどでガラッと変わるので、とてもこだわります。今も、何週間も目を調整して悩んでいたりします。横顔でも、表情は見る人に決めてもらえるようにしています。
服やファッションはずっと好き
―モチーフはどこから来ていますか?
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街角や雑誌で見てあのファッションがかっこいい、あんな髪形もいいなと感じたものを溜めておいて、それを落とし込んでいます。女性のほうが輪郭のラインや髪形のバリエーションが多いので、描くのも必然的に女性が多いです。
―特に好きなものや、影響を受けたカルチャーはありますか?
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漫画や音楽など変わらずに好きなものはありますが、何よりも服やファッションがずっと好きです。大人になってから国内外のブランドを勉強したり、服の着こなしを意識するようになって、イラストにも影響を受けました。ぴったりのサイズの服を着たシルエットだけでなく、ルーズなフィッティングにしたり。
共通して好きなのは、派手すぎず、ディテールにこだわりつつもシンプルなもの。いまはミニマムが流行りだと思うので、特に大切にしています。
―自分でイラストレーションを制作することと、依頼を受けてお仕事することで違うのはどんな点でしょうか。
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自分が好きじゃない髪形、表情、輪郭を求められるときは正直悩ましいです。
クライアントから提示された条件が決まっているときに、例えばこの髪の毛をうねらせたらもっと可愛いのに・・と思ってさりげなくそうしたら、うねらせないでください、とご指摘受けたりすることもあります。
言葉にするのが難しいですが、いわゆるイラストレーターの仕事は自分の分野じゃないなと最近思ってるんです。
例えば、引いた構図で全身を描いたり、躍動感ある感じに描くのなら、もっとうまくできる人はたくさんいる。お仕事を頼まれるのは嬉しいので、前はそういう仕事もがんばって受けていたんですけど、そうすると次にもそういうお仕事が来てしまいますよね。もちろんお仕事いただけることは非常にありがたいなと思うのですが、これは僕に向いていないと思うお仕事は、お互いに思っていたのと違うな、という仕上がりになってしまうので、始めからお受けしないのがお互いに幸せだなと思っています。
では自分ならどういう価値を提供できるか。最近は、そういうことも考えながら制作に取り組んでいます。
自分で納得のいったものを見てもらいたい
―今回の個展の内容について説明をしていただけますか。
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今回は今までで一番作品数が多く、小さい作品も入れると30点くらいでしょうか。いろんなバリエーションを見てもらいたいです。2018年夏ぐらいからこのスタイルになってきているので、この1年で試行錯誤して納得いった作品を見てもらえるいい機会かと思っています。
―今回のタイトル ”LIFE” にはどんな意味がありますか?
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モチーフの男の子、女の子は何か特別なことをしているのではなく、何気ない暮らしの一瞬を切り取ったものが多いので”LIFE”としました。具体的なタイトルにするとその意味に引っ張られてしまうと思うので抽象的なものを選びました。
―個展のグッズにはどういったものがありますか?
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Tシャツ、ポストカード、ステッカー、キーホルダー、サコッシュです。
デザインも新しいものや最近作ってオンラインにまだ出していないものも並ぶので、ぜひ手に取ってほしいです。デジタル上で見たときと、手に取ったり部屋に飾ったときは違うと思うので。
―これからやってみたいことなどあれば教えてください。
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将来的には自分が良いと思うクリエイターさん、アーティストさんをもっと世の中に紹介していける場を作っていければ楽しいのかなとも。
ただそのためにはまず僕がもっと認知されていかないといけない。
自分の作品をクオリティを高めていくのは勿論ですが、最近はコラボという形でブランドさんと一緒にプロダクトを作ることもあったりと、自分1人では完結しないお仕事も増えてきてるので、どれも妥協せず自分が納得いくものだけを出していけるよう日々取り組んでいければと思っています。
DMOARTS Director's eye
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SNSをきっかけに絵を描き始め、SNSをきっかけに話題を集める。絵描きの活動の仕方も時代によってさまざまです。乱立するイラストレーターの中で軽やかにクライアントワークなどを続けるRoooさんのスタンスは、同世代の一人としても共感するところがあります。
トレンドを押さえながらオリジナリティを追求し、絶妙な引き算をしたイラストには刹那の中にポップさをも感じます。複雑な感情の上でこそ成り立つ、シンプルな構図の作品なのです。
今回、作家自身にとっては地元大阪で初めての個展です。ぜひこの機会にご高覧ください。
digmeout / DMOARTS ディレクター
高橋 亮
ARTIST PROFILE
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Rooo Lou
デザイナー / イラストレーター
最小限の表現と色でシンプルながらも、感情と個性を感じさせるような人物画を中心に活動中。
https://digmeout.net/artists/rooo-lou/
協力
ARCHIVES
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Rooo Lou
デザイナー / イラストレーター
最小限の表現と色でシンプルながらも、感情と個性を感じさせるような人物画を中心に活動中。
https://digmeout.net/artists/rooo-lou/
もう一回誰かに見てほしいと思った