倉崎稜希 個展 「Traces Of The Soul」

UNKNOWN ASIAやART OSAKAでも好評を得た画家・倉崎稜希。2018年以降は海外の現代アートフェアにも積極的に作品を紹介し、目利きのプロから高い評価を得ています。今回、自身初の個展を前に福岡でお話を伺いました。

憧れの叔父の存在

―DMOARTSで初個展となる倉崎さん。まず簡単な自己紹介をお願いします。

  • 1995年生まれで福岡を拠点にしています。九州デザイナー学院でイラストやデザインを2年間勉強しました。2016年に卒業してからはアーティストとして活動しています。

  • ―DMOARTSで初個展となる倉崎さん。まず簡単な自己紹介をお願いします。

―イラストの勉強をするきっかけは?

  • 子どもの頃から絵や工作が好きでした。小学生の頃はバスケットをやっていたのですが、練習から帰ってきたら自宅では紙に車の設計図を書いて組み立てキットを作ったり。進学まで意識するようになったのは叔父の存在もあります。バンドマンでイラストも描く叔父が作ったTシャツを小学生の時にスーパーマーケットで着ている人を見て「かっこいいな!」と憧れていましたね。漠然と、こういう仕事がしたいなと思っていました。

―卒業後にフリーランスのイラストレーターになったのですよね。

  • 福岡にはイラストレーターが多くて憧れてもいました。もちろん叔父の影響もありますが、他の生き方をあまり知らなかったのです。サラリーマンになる気は無く、就活も一切しませんでした。イラストレーターは、クライアントと作者の関係性が分かっていたので、自分なりに抵抗なく選んだ道でしたね。

現代アートの展覧会を見て衝撃を受けた

―現在はコンテンポラリーアーティストとして認知をされていっていますね。どのように変化していったのでしょうか?

  • 2017年に地元の福岡アジア美術館で東南アジアの現代アート展「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」を観て、衝撃を受けました。地元ではアート展自体が少ないのですが、展覧会自体の規模も大きく、とても大きなインパクトを受けました。今の僕の系統に導かれたきっかけと言えます。それまでは、イラストもしたいしアート活動もしたいという両方の気持ちがありましたが、もっと実験的になろうと思ったのが一番の変化です。燃やすという発想はもとより、考え方、物の見方も変わりました。

―2018年から国内外の現代アートフェアに積極的に出ていますが、どんな印象でしょうか?また今回の初個展の意気込みは?

  • 海外については様々な人種の方がいらっしゃいますが、僕なりに「人種に関係なく人は死ぬ」ということも作品を通してアピールしています。僕自身は宗教観は全く作品には盛り込んでいませんが、観る側には色々と受け止め方はあるようです。欧米やアジアの中でも、シンガポールのように欧米の作品に数多く触れる文化圏のアートフェアでは好意的に受け止められています。他方、中国ではまだまだのようですから、別のアプローチも考えたりしています。今回の個展については、空間が全て僕の作品なので反応がとても気になるところです。

  • ―2018年から国内外の現代アートフェアに積極的に出ていますが、どんな印象でしょうか?また今回の初個展の意気込みは?

死生観からたどりついた、燃やす手法

―倉崎さんの作品は「火」を取り入れて燃やすことが最大の特徴と思われますが、その着想や原点について教えてください。

  • 描写する以外の物質的な表現がしたいという考えから辿りついたのですが、火は死生観を象徴しているんです。

    僕の死生観には育ったバックボーン大きく影響していて、そういったものを作品で表しています。僕が生まれる前に、生後間もなく亡くなった従兄弟がいました。僕の母親はその子に対して「元気になってまた戻ってきてね」と願ったそうです。その直後に母は僕を身ごもり、僕の稜希の「希」は従兄弟の名前から一文字貰いました。常々「稜希は従兄弟の生まれ変わりだ」と言われ、子供ながらに生死を意識していました。

    もう一つは、中学・高校とで自殺を2回目撃したのです。亡くなった姿よりも周囲で野次馬的に騒いでいる人・写真を撮っている人死生観の軽さというか、こんなものなのかと思うと痛烈にショックだったんです。こうした経験も含めて、作品にできないかと思い、火を使うことや目を燃やすことを始めました。

  • ―倉崎さんの作品は「火」を取り入れて燃やすことが最大の特徴と思われますが、その着想や原点について教えてください。

―人物もきっちりと油彩で描かれていますね。色やタッチなどこだわりはどうでしょうか?

  • 「人」という総称として描きたいので、意図的に情報量を減らしています。彩度を抑え、特徴的なものは描かないようにしています。

    燃やしているところだけエッジが当たっていて、絵はぼやけている、というコントラストも意識しています。絵は描いた後からぼかしているのですが、最初の頃はどうせぼかすからと細かいところを端折っていたのですが、作品としての強度、完成度が上がるようにきっちりと描いています。

―では、作品について教えてください。

  • 展示する作品には二つのシリーズがあります。

    まず、目を燃やす「Blindness(ブラインドネス)」シリーズでは、先ほどお話した僕の死生観にはじまり、死が見えていない「盲目になっている」姿勢を表現することがベースになっています。死を訴えてくる、少し攻撃的なシリーズです。

    もう一つは、の動きを表現する「Traces Of The Soul (トレーシーズ・オブ・ザ・ソウル)」シリーズ。燃やした時に出る煤の揺れや炎が燃え広がる様が画面上の空白に痕跡として残っていて、魂の動きや時間軸といった「魂の痕跡」を表しています。魂や、火が象徴する弔いの心にフォーカスしている、優しいものです。

  • ―では、作品について教えてください。

常に実験的でありたい

―倉崎さんのインスピレーションはどこから来るのでしょうか?

  • いろんな情報をインプットしようと思って読み漁っている論文から得ることが、作品に繋がっています。心理学、人種やアイディンティティなど興味があります。論文の中の課題と結果など、部分的に抜き出して読んで、数多く当たることを心がけています。

     

―今後、目指したいことは?

  • 常に実験的でありたいです。

    絵画としてだけの作品より、立体平面に関係なしで何かを描き合わせたものに関心があります。例えば、燃やすという手法も壁が見えるとこまで作品にしたら、もはや平面ではないですよね。

    いろんなものを吸収したいので、できるだけ海外で展示するときには行くようにしています。

    いま試している作品シリーズもあるので、強度を上げてクオリティが安定したら表に出したいと思っています。

  • ―今後、目指したいことは?

DMOARTS director’s eye

  • 倉崎くんが今の作風のトライアルを始めたのは1年半ほど前だったと思います。その前の秋にUNKNOWN ASIA 2017に出展するも、華やかしい結果が出たわけではなく、そこから制作を重ねて今の作風へと変化していきました。

    炎でキャンバスを燃やすことで、魂を昇華させる。彼の作品は、絵画としての強さを感じると共に、憂いを帯びた儚さがあり、ある種の”祈り”のような存在です。

    今回の個展では、世界各国で展示を続ける作家の新作をまとめてご覧いただけます。この機会にぜひご高覧ください。

ARTIST PROFILE

  • 倉崎稜希|Ryoki Kurasaki
  • 倉崎稜希|Ryoki Kurasaki

    1995 福岡県北九州市生まれ
    2016 九州デザイナー学院 卒業

    ・展示
    2016
    「Heart Art in FUKUOKA 2016」福岡アジア美術館 福岡
    「地元ニュークリエイター合同展示会」岩田屋 福岡
    2017
    「パリ ファッションウィーク」Amijedブース フランス
    「DISCOVER THE ONE JAPANERE ART」 Galerie JOSEPH Saint Martin  フランス
    「UNKNOWN ASIA 2017」 大阪
    2018
    「A SIGN OF EMOTION」 Masataka contemporary 東京
    「第13回タグボートアワード入選者グループ展」 東京
    「UNKNOWN ASIA 2018」大阪

    ・アートフェア
    2018
    「ART OSAKA 2018」大阪(DMOARTS)
    「Art Expo Malaysia 2018」 マレーシア(LSD)
    「PARIS CONTEMPORARY ART SHOW」フランス(Gallery小暮)
    「ART ASIA 2018」韓国(Gallery小暮)
    2019
    「Taipei Dangdai 2019 」台北(Roentgenwerke AG)
    「ART FAIR PHILIPPINES 2019」フィリピン(Gallery小暮)
    「ART FAIR TOKYO 2019」東京(Gallery小暮)
    「ART CENTRAL 2019」香港(Gallery小暮)

    ・受賞歴
    第13回タグボートアワード 入選
    UNKNOWN ASIA 2018 審査員松尾良一賞 (TEZUKAYAMA GALLERY)

    ・メディア掲載
    2017 「The Guide Artists」8巻・10巻掲載 スペイン
    2018 「The Guide Artists」日本人アーティスト特集号 表紙・作品掲載
        日経プラス10 「アート特集」
    2019 アートコレクターズ 3月号

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