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築50年くらいの古いマンションだけど間取りが面白くてね。自分以外、人が住んでるのかなぁってぐらい静かです。昼間は光がたくさん入って植物もいい感じですよ。
--ヘビオさんの標準的な1日は?
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夜は12時頃に寝て、夜明けとともに起きる。だいたい5時か6時くらいですね。そこからずっと描いたり何か作業をしたり仕事をして、合間に食事をしたり珈琲を淹れたり。描いているときは落語を聞いたり昭和歌謡を聞いたりしながら言葉を耳に入れています。
--イラストレーターになったきっかけは?
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中学生の時にバイク雑誌の「読者投稿ページ」に、何となくイラストを描いて送ったら掲載されて、謝礼が出てびっくりしました。「絵を描いたらお金が貰えるんだ」って(笑)そこから毎月送り続けましたね。もちろん当時はイラストレーターという仕事があるということも知らなかった。絵を描くのは昆虫が好きになったのと同時期で、よく観察して描いていましたね。僕、中学を卒業してからすぐに印刷会社のデザイン室で働きました。当時はMacなんてないから工程ごとに専門家が手仕事でこなしていきます。写植とかね、今は何でもMac1台で出来るけれど当時はたくさんの人の手で作られていた。
--では、そこで学んだことの影響は大きいですね。
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僕がもし大卒で就職していたら、その年齢の頃はMacの時代でしたから、アナログの世界を知ることはなかった。まさに、職人さんの世界で、それが僕の今の軸になっているのかなって思う。人の作品を観るのも、そういう作業的な目線で細かいところを観察してしまいますね。しかし働いて30数年、フリーのイラストレーターになって15年くらい。キャリア長いなぁ(笑)。
--好きなアーティストを教えてください。
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手塚治虫は神様的な存在です。この本「昆虫つれづれ草」、凄まじいでしょ。 昆虫好きだった手塚少年が中学生の時に描いた観察図。僕も虫や動物ばかり描いてた。ミルトン・グレイザー大好きですね。チャーリー・ハーパーも好きです。この人は科学や動物のモチーフが多い。僕が昆虫や動物に惹かれる理由は「機能美」だからか、デザインがとても気になります。
--今回はシリーズ3回目、DMOARTSの年末恒例となった干支がテーマの個展ですね。
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来年の「亥」がテーマですが、猪って日本に2種類しかいないって知ってました?酉、戌と比べて少ないから、別の視点で「亥の刻」という今でいう21時~23時の夜の二時間に繰り広げられる物語性がある作品にします。ファンタジーのような怪談チックのような。子供が主人公だったりもします。他の個展と違いテーマが決まっている分、モチーフに制限があるためプレッシャーは大きいけれど楽しんで描いています。
--来年はこんな年になったらいいなーとか想いを入れて描いたりします?
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いや、それはないな(笑)。今回は亥の刻から始まる夜に繰り広げられるお話しで、自分でストーリーは考えるけど、観た人が感じるストーリーの方が本物だと思うので、あまり僕からは「ここを観て」というのはないですね。
--ヘビオさんの作品で人間が主人公というのは珍しいですね。
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普段は登場しないですね。特に理由は無いけれど虫や動物のほうが見ていて面白い。動物賛歌に近いですね。
--作品に登場する動物の目が印象的なのですが、あれは何かを表現しているのですか?
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基本は、「人間を憐れんでいる目」なんです。人間の愚かさをあざけ笑っているような。人間の愚かさや残念な部分を観ている目です。
--動物のどういうところに共感しますか?
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マニアックな話しだけど、「かかと」が一番好きです。動物はかかとを付けずに歩くのが面白い。かかとが地面についていると、次のアクションに素早く移れないでしょ、それって常にどこかのテンションが上がっているというか、進化しているというか。そういう機能的なところが好きです。
--ヘビオさんの作品は直線と円の組み合わせが面白いのと、色が印象的です。
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線は意識しています。なるべく単純化、潔くしてみようと。直線はあくまで直線、曲線は流れるように。色は僕の作品全体のテーマで決めていたのが「明け方」で夜明け前の明るくも暗くもある時間帯なので、作品全体の色調に現れています。今回は夜ですけどね。人工的にならないようなイメージで色を選んでいます。
--職業上イラストレーターですが、イラスト以外にしたいことは?
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文字を書いたり、デザインするのも好きなので、映画のタイトルとかやってみたいですね。
DMOARTS DIRECTOR’S EYE:
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玉村ヘビオさんは干支をテーマにした展覧会を続け、今年3回目の個展です。今回はイノシシそのものではなく、「亥の刻」という切り口で表現します。夜の時間に活動する動物をテーマにしており、イノシシ以外の動物も登場する賑やかな内容です。温かみのあるタッチで描かれる動物たちを観て想像することで、物語が花ひらく展覧会になりそうです。
ARTIST PROFILE
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玉村ヘビオ Hevio Tamamura
1971年京都市生まれ
グラフィックデザイナーを経てフリーのイラストレーターとして活動中。
幼い頃なりたかった「昆虫博士」と少し形は変わったものの、今でも大好きな生き物や、もしかするとそこにもいるかも知れない 得体のしれない存在を描くことを得意とする。
見る人が絵の動き、ストーリーを想像してしまうイラストを心掛け、ロゴマークや挿絵、キャラクター等の作品を制作。
著書に「ヘビオの動物折り紙(日本ヴォーグ社)」がある。
http://torinoco.com/
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協力
ARCHIVES
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玉村ヘビオ Hevio Tamamura
1971年京都市生まれ
グラフィックデザイナーを経てフリーのイラストレーターとして活動中。
幼い頃なりたかった「昆虫博士」と少し形は変わったものの、今でも大好きな生き物や、もしかするとそこにもいるかも知れない 得体のしれない存在を描くことを得意とする。
見る人が絵の動き、ストーリーを想像してしまうイラストを心掛け、ロゴマークや挿絵、キャラクター等の作品を制作。
著書に「ヘビオの動物折り紙(日本ヴォーグ社)」がある。
http://torinoco.com/
--植物がたくさんあるレトロなアトリエ。素敵ですね。